東北関東大震災で、もっと甚大な被害をもたらしたのが津波だ。今回の津波は、地震発生から1分とたたないうちに第一波が海岸沿いまで届き、約30分後に巨大な波となって沿岸部に到来したとされる。
地震によって巨大津波が発生するメカニズムについて、NPO防災情報機構の伊藤和明会長はこう解説する。
「海域で大きな地震が発生するとその衝撃で海底が高く盛り上がったり、低く沈んだりします。この動きが海水に伝わり、海面にうねりが生じます。それが津波となって四方の沿岸へ押し寄せるんです」
台風をはじめとする気圧の変化によって生じる風が海水の表面に波を生じさせる「高波」とは、まるで別次元のパワーをもつという。
「風によって起きる高波はあくまで海の表面上でのもの。一方、津波は広い範囲の海水が揺れにより一気に持ち上げられて起こり、沿岸に向けてまとまって動く。海水量がケタ違いに多いんです。まさに海全体が巨大な“水の塊”となって沿岸に押し寄せるので、津波が内包するエネルギーは圧倒的に強力です。津波が家屋や自動車を一気にのみ込んで獰猛に突き進むのは、この力あってこそです」(伊藤さん)
実際、港湾空港技術研究所(神奈川県横須賀市)が行った実験によると、普通の波と同じ高さの津波の力を比べると津波のほうが1000倍強く、時には1万倍以上になることさえあった。2メートル級の津波は厚さ10センチメートルのコンクリート壁を破壊する力をもつという。これでは日本の家屋はひとたまりもない。
津波被害に関する調査によれば、木造家屋は2mの津波で全壊し、5m以上で住民の1割が命を落とすとされる。さらに10メートルで3割、12メートルでは半数もの住民が死亡する。鉄筋コンクリートビルであっても16メートル以上の津波が来ると全面的に破壊されてしまうこともあるという。
※女性セブン2011年3月31日・4月7日号