大震災で改めて注目されたソーシャルメディア。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏がその意味を改めて検証する。
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震災以降、テレビは連日、地震や津波、原発事故の映像を流し続けてきた。そのため、震災から2日ほど経ったころには、ツイッターのタイムライン(フォローしている人々のツイート=“つぶやき”が時系列で流れる)を眺めていると、悲惨な映像を繰り返し見させられてストレス障害になり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の前段階まで進行していると見受けられる人が増えているように感じた。
だから、私はツイッターでは悲惨な情報を流さず、勇気づけられる情報や客観的な情報、実用で役立つ情報を流すよう心がけてきた。テレビは伝えない情報をえようと考えたのである。
今までツイッターなどのソーシャルメディアは、口コミ情報を主体とした、単なる“遊びのツール”としか認識されていなかった。
しかし今回、非常に多くの人々と情報共有をするなかで、改めてツイッターというメディアがどれほど大きな力をもつのかがわかった。被災者の救援を求めるつぶやきをリツイート(転送)してSOSのメッセージを広めたり、給水車の情報や病院の受け入れ情報などをツイートすることで、被災者の支援ツールとして有効に機能した。電話がつながらないなかで、遠隔地に住む家族の安否確認にも使われた。自治体は住民への情報発信にも利用している。
また、東京では節電のために鉄道の運行本数が減り、混乱が起きているが、人々が「○○駅までしか運行していなかった」といった事態に直面したときに、ツイッターの利用者はそれをつぶやく。
そういった駅や路線に関するつぶやきを検索して、リアルタイムの運行状況を知ることができる「ツブエキ」という有用なiPhone用アプリも人気を博している。今回の震災に際して、開発者は有償だった製品を無償で提供することを決め、喝采を浴びたことも付け加えておく。
ツイッターは、こういったマスコミ報道では絶対に流れない、生活に密着した細かな情報の流通に貢献しているのである。
※週刊ポスト2011年4月1日号