3月11日の東北関東大震災により、未曾有の被害をもたらした津波。そのスピードは想像をはるかに上回るものだ。
気象庁によると、水深500メートルの沖合で津波はジェット機に匹敵する時速800メートルで移動する。水深が浅くなるにつれて速度は落ちるとはいえ、水深100メートルでも時速100キロメートルを超える。陸地近くに迫っても時速36キロメートルあり、五輪100メートル走のメダリスト並みの速さだ。
「時速36キロメートルは秒速10メートルというすさまじい速さです。これでは一般人が走って逃げてもかなうわけがありません」(NPO防災情報機構の伊藤和明会長)
日本近海で発生する地震ほど津波の到来も早い。内閣府は東海地震が発生するとわずか1分以内に静岡市に津波の第一波がやって来ると予想している。 また、発生してから徐々に巨大化することも津波の特徴のひとつだ。
「沿岸に近づいて速度が落ちるにつれて後方の波が前方に追いつくので、沿岸に近づくとともに波はどんどん高くなります。これを“海の壁”といいます」(伊藤さん)
このため、沖合の船よりも港近辺の被害が大きくなる傾向がある。2004年のスマトラ島沖地震では高さ34メートルもの津波に襲われた地域もあったという。
今回の震災では、津波は仙台市・名取市の内陸10キロメートルまで到達した。強く大きな津波は沿岸の町を駆け上がり、戻るときはさらに大きな力で地上にある多くのものを巻き込んで海に引きずり込む。この繰り返しで被害が大きくなっていく。
だからこそ津波は2010年のハイチ地震で死者22万人、2004年のスマトラ島沖地震で死者・行方不明者22万人といった甚大な被害を引き起こしたのだ。
※女性セブン2011年3月31日・4月7日号