被災地の最前線で、まさに体を張って救助にあたっているのが、自衛隊員たちだ。政府は3月16日、制度発足後初めて、予備自衛官らの招集を決定した。
予備自衛官は、平時は民間で働き、招集があれば駐屯地警備などの後方支援を行なう。退職した自衛官で構成され、有事の際には常備自衛官と同じ任務にあたる即応予備自衛官もいる。
「私は普段は建設業をしています。会社員から農家まで、即応予備自衛官の職業はさまざま。訓練出頭もあり、正社員として採用してくれる事業者が少ないため、失業状態の者もいて、仲間うちでは『即応貧乏』などと軽口も叩きます。しかし、士気は高く、誇りもある」
こういって、30代の即応予備自衛官・Dさんは胸を張った。
「中隊から所在確認と出頭の意思の確認があったので、“ぜひ出させてほしい”とお願いしました。自分たちは国の危機のために存在しているわけだし、日頃の訓練もそのために行なってきたわけです。仕事はクビになるかもしれませんが、覚悟はしています」(Dさん)
彼を駆り立てるのは、1日3時間程度の休憩しか取らずに救出と復興作業に当たっている現場の自衛官たちの姿だ。岩手県・釜石市内で被災した主婦のEさん(50歳)は、そんな自衛官に救出されたひとり。
「被災地であの迷彩服、ヘルメット姿を見たとき、“助かった”と感じました。被災者にとって、自衛隊の姿は頼もしいもの。統制がとれ、テキパキとした姿は本当に素晴らしいです」
地元で救出活動を行なうある隊員は、親族が行方不明にもかかわらず、避難所の掲示板を素通りしたという。被災者たちに不安を与えないようにするためだ。
※週刊ポスト2011年4月1日号