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映画を家で安く見られるようにした立役者は日本と井沢元彦氏

 イギリスのBBC放送が「世界に貢献している国」をアンケート調査したところ、日本は3年連続でトップだった。われわれ自身は気づいていないが、日本で生まれた技術や思想に世界の国々が敬意を表していることをもっと誇りに思っていいと作家の井沢元彦氏は説く。

* * *
 映画というものがある。
 
 ほんの半世紀ほど前までは、映画を個人の家で見るというのは、限られた大金持ちにだけ可能な贅沢な行為だった。
 
 映写機と映写技師、スクリーンのある映画館、もちろん本編のフィルムと大量の電力、そうしたものがあって初めて可能なことだった。
 
 今は違う。いや正確に言えば、30年以上前から人類は、かなり貧しい家庭でも、映画を自分の家で見られるようになった。

 では、誰がそうしたのか?  誰によって人類はそういう恩恵を受けるようになったのか?
 
 日本人ではないか。ビデオの原理自体は日本人の発明ではないにしても、それを貧しい家庭でも使えるホームシステム(家庭用ビデオデッキ)にしたのは、まぎれもなく日本人が「品質を落とさずに安く作った」からである。

日本人自身がこのことに気が付いていない。 こうした方法で、地球人類をいかに幸せにしているか、ということを、である。

 自動車もそうだ。 自動車というものは、数十年前までは金持ちの独占物であった。庶民がそれを持つということは夢にも考えられなかった。
 
 それを可能にしたのが、日本の軽自動車だ。今でこそインドあたりが小型車を自国生産できるようになったが、初めて日本だけでなく世界の庶民の手の届く価格の車を作ったのは日本人なのである。
 
 カメラも時計も計算機も、もちろんそうだ。これはすべて昔は超高級品であり超高価格だったものばかりだ。時計や計算機について言えば、性能については高級品より優れているものも少なくない。今でこそ当たり前の「クオーツ式腕時計」は、時間をはかるという機能においては、スイス製の機械式など問題にならないほど精度が高い。
 
 そういうものを、われわれ日本人は人類に提供し、その平等化を進めてきたのである。
 
 このことはもっと高く評価されていいし、日本人自身も誇りに思っていいことだ。

※SAPIO2011年3月30日号

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