中央政府という“お上”に頼れない以上、地方自治体はそれぞれ智恵を絞って災害対策に当たらなければならない。なかでも「民」の力が鍵となる。
三陸海岸沿岸の自治体は、1960年のチリ地震を始め、幾度となく津波被害に見舞われてきた。そのつど訓練の充実や堤防を整備してきたが、今回は想定をはるかに超える津波だったために被害が拡大した。
東京経済大学教授の吉井博明氏(災害情報論)は、通信機器の活用を訴える。
「今回の震災では、阪神大震災時には普及していなかった携帯電話、特にメールが活躍しました。電波がつながりにくい問題も、通信事業者による移動中継車の投入で解消されつつあります。また、NTTドコモはエリアメールという地域ごとの一斉送信サービスをやっており、地域情報の伝達には非常にいい。他の通信事業者もぜひやってほしい」
しかし、バッテリー切れや端末紛失などで、連絡がつかない人も多かった。
「人は移動するから、紛失した人には避難所等で新しいものを与えるような制度もあっていい」(吉井氏)
被災者の家族には、いまだに安否確認ができていない人も少なくない。
「避難者名簿を各自治体で共有管理できるシステムの構想はあったのですが、なかなかうまく運用できていないようです。避難所ではどうしても水や食料の確保が最優先になります」(吉井氏)
そこで活躍するのがソーシャルネットワークである。
「ツイッターを防災目的でやっている自治体や行政機関はありますが、ミクシィやフェイスブックなどのアカウントも公的機関が率先して持ち、正確な情報を提供できるようにするべきです」(吉井氏)
※週刊ポスト2011年4月1日号