3月15日。被災地へとつながる磐越自動車道の阿武隈高原SAには、震災から逃れてきた人たちや、救援隊が時折、立ち寄っていた。SA内のレストランは休業。しかし、店頭のテーブルの上には籠が置かれ、お菓子が並べられていた。チョコレートにういろう、生サブレ、煎餅……。
お金を払おうとする人に、SAのスタッフがいう。
「こんな時ですから、どうぞお持ちください」
それは地震で困っている人のために少しでも役立ちたいと、スタッフたちが自主的に無料で配っているものだった。被災した福島市内は物不足が深刻で、コンビニの棚もほとんど空の状態が続いている。
「そんななか最高に嬉しかったのは、久々にお米が食べられたことでした」
というのはCさん(30代・会社員)である。市内のあるセブン-イレブンで、ラップに包んだ手作りのおにぎりが1個100円で売られていたという。
「あまりに商品がないことを申し訳なく思った店の奥さんが、自分でお米を炊いて自分の手で握ったものでした。それをご主人が“こんなものしか売れなくて申し訳ない”と、1回1回頭を下げていた。温かいおにぎりを食べることができたお客さんも“ありがとうございます”と丁寧にお辞儀をする。何も入っていない塩味だけのおにぎりでしたが、こんなにうまいおにぎりは食べたことがありませんでした」(Cさん)
※週刊ポスト2011年4月1日号