震災で様々な国・個人から義援金が日本に送られている。ジャーナリスト・富坂聡氏の元にも1本のメールが来た。「日本人に恩義がある。ぜひ義援金を送りたいのだが、窓口を教えて欲しい」--その人物は今は米国に住み、かつて「歌舞伎町を支配する男」と恐れられた中国マフィアの元首領だった。富坂氏が語る。
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私も彼から突然そんな申し出を受けて驚きました。地震が起きた直後、彼から国際電話で「大丈夫か」と安否を尋ねられ、そのさいに私のメールアドレスを聞かれたんです。それからいきなり義援金の申し出です。理由は、「おれは日本で犯罪を重ねてきたが暗い一面ばかりでない、良心を示したかった」ということでした。
1990年代末から2000年の初めにかけて、新宿・歌舞伎町には福建省、上海、中国残留孤児の三つの大きなグループがあって、彼は福建省グループのドンでした。といっても日本の暴力団とは違い、見た目は普通の風貌なんですが。主な稼ぎはパチンコ詐欺や偽造クレジットカードでした。
偽造カードはマレーシアなど東南アジアから持ち込まれたもので、他の犯罪グループに卸していました。彼が逮捕された時には、ジュラルミンケース一杯の偽造カードを持っていたと聞きました。
「引退」後は内縁関係にあった中国人ホステスと結婚しています。銀座でも有名だった美人姉妹の妹です。いまはアメリカで悠々自適のセミリタイア生活をおくっています。いくら稼いでいたか? うーん、そういう生活をおくれるんだから、ヒトケタの億ではきかないんじゃないでしょうか……。
彼にはとりあえず日本赤十字の窓口を教えました。あとからいくら寄付したのか、訊いてみたいですね。