“政治とネット”といえば、この人の存在を忘れるわけにはいかない。4年前の前回東京都知事選に立候補し、「政府転覆」を訴え最後にカメラに向かって中指を突き立てるという過激な政見放送がYouTubeやニコニコ動画などに出回り、ネット上で一大ブーム(?)となった「革命家」の外山恒一氏だ。大手マスコミが完全に黙殺する、いわゆる“泡沫候補”の一人だったにもかかわらず、選挙期間中にブログ等で言及された回数は、当選した石原慎太郎氏のそれをもはるかに凌ぐブッチギリの一位。
今回は出馬を断念したようだが、ネットユーザーの間では今でも何かと話題の外山氏。どれだけネットに詳しいのか話を聞いてみた。
「いやー、たまたまああいう注目のされ方をしたもんで、私のことをネット利用に長けたその道のプロみたいに思ってる人も時々いるんだけど、全然そんなことないんですよ。携帯のメールすら一度も使ったことなくて、それを自慢してるぐらいですから」
――え? メールもやらないんですか?
「もちろんパソコンでは使いますけどね。携帯は、あれは移動電話でしょ、本来。たまに私の携帯に、番号から自動的に送信できるんだろうと思いますが、勝手にメールを送ってくる友人もいて、私は返信しないどころか開きもしませんから、怒られたりもするんですが、そんなもん知るかですよ」
――でも、ツイッターはなさってますよね?
「そうそう。半年ぐらい前に始めて、それで携帯からも呟くために初めて私の携帯はネットに接続されることになったんですが、敗北感というか、何かに屈服した自分を感じて不愉快になりました」
――ネットに反感があるんですか?
「全面的に否定的です。革命の暁には“IT反革命”を推進するつもりです」
――失礼ですが、外山さんが有名になったのもネットのおかげのような気もするんですが…。
「それは大きな誤解です。ネットのせいで日本人の知性が劣化していなければ、わざわざ三百万円も(供託金として)国にくれてやってまで売名選挙にうって出なくとも、私はもっと早い時期に、もっと正当に評価されて、今より何十倍も有名になっているはずです。私はむしろ、ネットのせいで社会的成功を阻まれていると思っています」
――ネットが日本人の知性を劣化させたというのはどういう……?
「ネットというのは民主的なんですよ。誰でも不特定多数に向けた情報の発信者になれる」
――民主的なのは良いことでしょう?
「とんでもない。サイト等で公言しているとおり、私はファシストです。当然、民主主義を否定する立場です。誰もが自由に自分の云いたいことを云える社会なんてロクなもんじゃありません。公にモノを云うには、基本的な素養とか、文章の訓練とかをふまえた、そういう一種の“資格”のようなものが絶対に必要です。選挙で例えるなら、自民党と共産党の区別もついてないような政治オンチに選挙権なんか与えていいはずがないのと一緒です」