【書評】『オジいサン』(京極夏彦/中央公論新社/1575円)
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益子徳一、72歳。連れ合いなし、子供なし、当然孫もなしの独居老人が、昼下がりの公園で“オジいサン”と呼ばれ困惑。要するに〈自分は老人だという自覚は十二分にあったのだけれど、自分がおじいさんだという自覚は、まったくなかったのである〉。電気屋の2代目が地デジの話をしても今ひとつ分からないが、どうも世の中は物凄い速さで変わっているらしい。最小限の人間関係と反復の毎日。理屈っぽいけど味のある徳一の達観とは……。
※週刊ポスト2011年4月8日号