松本孝弘、上原ひろみら、今年の米・グラミー賞に日本人が4人も受賞した。賞賛の声が寄せられるのは音楽界だけではない。その他のカルチャーでも世界で絶賛される日本人は続出している。ノンフィクションライターの窪田順生氏が紹介する。
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独創性を武器に海外に衝撃を与えたケースは多い。たとえば、水玉と強烈な色彩の作品で知られる前衛芸術家の草間彌生。日本ではもちろん有名だが、すでに1960年代のアメリカでは、独特の反戦活動やパフォーマンスから「前衛の女王」と注目を集め、1990年代にベネチアビエンナーレなどの世界的芸術イベントでもあらためて評価された。
海外で長期にわたって活躍している日本人として忘れてならないのは、北京オリンピック開会式や「ドラキュラ」「ザ・セル」などのハリウッド映画の衣装を担当したデザイナー石岡瑛子だろう。資生堂のグラフィックデザイナーを経て、1980年代にニューヨークに渡り、マイルス・デイビスのアルバム「TUTU」のジャケットデザインを手がけて注目を集めた。近年もビョークのミュージッククリップなどを担当。その独創的な世界観は、多くのクリエーターを魅了している。
また、大きな目の女の子をモチーフにしたポップアートで日本でも人気が高いグラフィックアーティスト、奈良美智もかつてドイツを拠点に活動し、欧米を中心にいまでも高い評価を得ているひとりだ。
本来の「日本の強み」で勝負して、成功しているケースも多い。たとえば、日本が世界に誇るアニメ文化。この分野で引く手あまたなのが堤大介。世界的ヒットとなったピクサーアニメーションのアニメ映画「トイストーリー3」のアートディレクターを務めた。彼は高校卒業後、語学留学で渡米。あまり英語を喋らなくて済むという理由で絵画のクラスをとったことがきっかけで油絵を習得、アメリカで就職。CGアニメを手がけるNYブルースカイスタジオで映画「アイスエイジ」のコンセプトデザインを担当した後、ピクサーアニメーションから声をかけられて現在にいたる。
※SAPIO2011年3月30日号