被災者の秩序ある行動に対して「どうして略奪が起きないのか」と海外から驚きの声が上がった。ところが、ガソリンや食糧を求める整然とした列の裏側では、被災者の弱みにつけこむ不逞の輩も出没し始めた。
今、被災者に救援物資を送ろうと全国からボランティアなどが集まっているが、津波で壊滅状態になった岩手県陸前高田市では、災害支援を装った“火事場泥棒”が横行しているという。
「『救援物資』と書いた紙を車のフロントガラスに貼っているが、それは真っ赤なウソ。被災者が避難して不在なのをいいことに、車で空き家を回っては、金になりそうな物を盗むなどしている連中がいる」(警察関係者)
ソーシャル・ネットワーク・サービス『ミクシィ』では、20歳の定時制高校生が書いた“略奪日記”が物議をかもした。
〈2日目は港行ってきた!マジで海の被害やべえ 怖かったけど食料とガソリン盗んできた!! あとラブホから財布GET めっちゃGETできて嬉しかった!〉
自分も被災者でありながら、被災者の気持ちを踏みにじっていることに気づかないのだろうか。
ユーチューブでは、従業員の目の前で、人々が食物倉庫から物を堂々と持ち去っていく映像がアップされ、話題になっている。その姿には、人の物を盗っているという後ろめたさは何ひとつ感じられない。
車からガソリンが抜き取られたり、閉店しているコンビニや小売店から食料品や現金が盗まれる事件も頻発。さらには高級ブランド店や貴金属店を狙う強盗事件も相次いでいるという。
石巻市では高級衣料品店で、レジにあった現金10数万円のほか2000万円以上の商品が盗まれる事件が発生。犯人はウィンドウを壊して侵入していたという。気仙沼市では、倒壊した気仙沼信用金庫松岩支店の金庫から約4000万円が盗まれた。
いずれも犯人はいまだ捕まっていない。警察によるパトロールが被災地で手薄になっていることをいいことに、まさにやりたい放題である。
※週刊ポスト2011年4月8日号