東日本大震災で損傷した東京電力福島第一原子力発電所への外部電源の復旧工事、そして、放水・冷却作業。被曝覚悟で決死の活動を展開している現地の東電、メーカー、下請け業者、自衛隊、警察、消防の方々には心から敬意を表したい。大前研一氏はそう語りながらも、「だが」――と、問題の本質を以下のように指摘する。
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2007年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が損傷した際、私は今回の問題が予見されたため「日経BPnet」のコラム『「産業突然死」時代の人生論』で、緊急に取り組むべき改善点として、【1】プラントとしての耐震設計が抜け落ちていた、【2】個々の機器の吟味が足りなかった、【3】情報発信が国内選挙対策向け・地元向け中心で、世界に対する配慮が欠けていた―という3点を挙げた。
その上で、原子炉が全部停止し、緊急発電装置も外部電源も取れない状況を想定し、内部に安全度の高い小型火力発電所を併設するか、原理の異なる本格的な自家発電装置を設けねばならない、圧力容器の蓋を取り外すクレーンなど格納容器内にあるすべての機器やシステムが炉心と同じ安全基準を満たしていなければならない、と提言した。
しかし、東京電力も国も、何もやらなかった。あの時、電源の問題だけでも改善していたら……と悔やまれてならない。
※週刊ポスト2011年4月8日号