東京を発端に、「不安の連鎖」が広がっているのか、震災地から遠く離れた関西や九州にも買い占め騒動が波及している。
トイレットペーパーや水、電池やお米、缶詰などが品切れとなっていたり、店頭に並んでいても品薄で、「一人1点限り」といった張り紙も少なくない。
そうした買い占める人たちに批判が集まるが、どうやら災害時用だけではなく、別の事情もあるようだ。例えば神戸で話を聞くと、
「私たちは阪神大震災を経験しているので、被災地で何が必要になるか、身に染みて分かっている。あの時は全国の人に助けてもらいましたから……今回は私たちが助ける番。だから、こちらでたくさん買い込んで、東北に送っているんです」
災害・リスク心理学に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠教授はそうした買い占めの背景にある群集心理をこう分析する。
「パニックを恐れて事実を小出しにする政府を皆、信じられなくなっています。“事実の隠蔽”が疑いや恐れを生み、不安が解消されないため自衛行動に出ているのでしょう。買い占め行動は、政府やメディア不信の現われともいえます」
被災地には買い占めるだけのモノすらない。どうぞ、どうぞの譲り合いの精神が今一度求められている。
※週刊ポスト2011年4月8日号