当初、義捐金での支援を発表していた企業も、状況を見ながら救援物資などの支援を申し出ているようだ。
ただ、こうした動きに対して、経営評論家・長田貴仁氏は警鐘を鳴らす。「現地の状況を見てから、独自色を出さないとただの商品PRで終わってしまう。消費財を送る企業は、自治体の状況をウォッチしながら、被災地が本当に必要な物資を見極めるべきです」
今回の震災でも、震災翌日に食料支援を発表して、納入先決定に1週間以上要した食品メーカーがあった。それこそ“商品PR”といった誹りを受けかねない。
企業が独自色を発揮するにも物流や受け入れ体制を整える必要がある。飲料メーカーの広報部もこういう。
「一企業にできることは限りあるし、いくら多額の寄付をしても支援の方向性に誤りがあれば売名行為と非難される。企業側にも相当の重圧がかかっています。やはり民間主導には限界がある。本音をいえば政府が主導して受け皿や流れをしっかりと作ってもらいたい。被災地でこれが足りないから、おたくはこういった物資を送ってもらいたい、と。そしたらもっと支援がスムーズにいくと思うんです」
義捐金のほかは、具体的な支援計画を表明していない大手企業も多い。被災地を助けたい気持ちはあっても、国難に際して自社の役割を見出せないのが実情だという。長田氏が補足する。
「経済界だけが問題なのではなく、政治側が企業に対してまったくリーダーシップを取れていない。財界とのパイプのない民主党政権の弱さが改めて浮き彫りになってしまいましたね」
こうした声を受け、ソフトバンク・孫正義社長は政府と交渉して支援の枠組みを要請しているという。
ソフトバンク関係者が明かした。「震災後、孫社長は福島を訪れ、被害状況に愕然としています。とても民間企業で解決できる問題ではないと思ったんでしょう。そこで政府と連携をとることを模索しながら、個人的な親交のあるファストリの柳井会長やローソンの新浪剛史社長に声をかけた。今は業界を超えた結びつきを作ろうと奔走しています」
※週刊ポスト2011年4月8日号