国内

大前研一氏 復興のため期間限定の消費税2%アップを提案

 未曾有の大震災で傷ついた日本の再生には何が必要か。大前研一氏が黄金の「復興プラン」を明かす。

 * * *
 私が首相だったら、次のような「日本を生まれ変わらせる復興プラン」を打ち出す。
 
 まず、今回の大震災・大津波で、甚大な被害が出た最大の原因は、防災の観点から見て危険な場所に人が住んでいたことである。海に面した低い土地に広がった三陸の町は、過去に何度も津波被害を受けてきた。このため津波に対する備えは、それなりに固めていた。にもかかわらず今回の大津波では、ひとたまりもなかった。それがわかった以上、被災した住民の皆さんの意見も踏まえつつ、二度と悲劇を繰り返さないよう、津波で壊滅した海の近くは民家ではなく公共の頑丈な建物と緑地だけにして、住宅地は安全な高台に移すことも考えなくてはならない。そのための費用は全国民で負担する。
 
 もうひとつは、港の再建だ。1960年に起きたチリ大地震で、三陸海岸沿岸は最大6mの津波に襲われて岩手県大船渡市や宮城県志津川町(現在の南三陸町)などでは犠牲者が出たが、高さ約10mの巨大防潮堤があった岩手県田老町(現在の宮古市田老地区)では死者はなく、被害はほとんど出なかった。このため、その後、三陸の港は全部、防波堤や防潮堤を建設した。ところが今回の大津波に対しては無力だった。今後は今回以上の大津波からも町を守れる巨大な防波堤・防潮堤と水門を造り、いざとなったら水門を閉めるしかない。
 
 だが、その建設には巨額の費用を要する。すべての港に造ることはできないので、岩手県の宮古、釜石、大船渡、宮城県の石巻、仙台塩釜、気仙沼など重要な港だけに限って強固なものに再建し、桟橋や魚市場も近代的に整備する。それ以外の地区の漁師の人たちには、再建した大きな港に“通勤”してもらう。つまり、住む場所と働く場所を分ける形で、安全な職場と住宅を確保すべきだと思うのである。

 以上の復興策の財源は、国債ではなく、消費税の税率を時限立法で引き上げて充当する。いわば“復興消費税”だ。
 
 阪神淡路大震災の際には、政府は3回の補正予算で計3兆2000億円の復興費用を投じた。今回は、それを大幅に上回る金額が必要になるのは確実だ。大胆な予算組み替えをするにしても、それだけではまかないきれないだろう。そうなれば増税せざるを得ない。その金額を仮に4兆円とすれば、消費税を1%上げると税収は1年間で2兆円余り増えるから、1%なら2年間、2%なら1年間の時限立法で足りる。そうやって財源の裏付けができれば、国債が暴落して国家がメルトダウンする最悪の事態を回避できる。
 
 しかも、東北復興のための期間限定消費税となれば、それが国民の連帯感を生む。従来は消費税を上げると消費を手控える傾向が見られ、復興消費税もマイナス効果だという反論がある。しかし、東北の人たちを支援するために大いに買ってください、飲んでください、食べてください、と首相が言えば、きっと国民はその気になるはずである。
 
 経済は生き物だ。そうやって「オールジャパン」による前向きの駆動力を生み出せば、日本経済は震災前よりも活性化される。それがリーダーの役割というものだ。

※SAPIO2011年4月20日号



関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト