少しずつだが戻り始めた被災地の笑顔。今、人々の助け合いの輪がこの笑顔をつないでいる。
家が倒壊したにもかかわらずラーメン店にかけつけ、無料で食事を振る舞う店主。ワゴンカーで各地を回って散髪する理容師。避難所の健康を守るのは、そこで被災した医師や看護師だ。
自分たちにできることは何かこうした「行動」はすでに各地で始まっている。
かつて阪神・淡路大震災の被害にあった神戸市。市の中学校生徒会は「気持ちを届けたい」と学校内外で義捐金を集めることを決めた。市内全83校が一斉に募金活動をするのは初めてだという。こうした助け合いの動きは世代を超えて広まっているのだ。
217時間ぶりに救出された16歳の少年、阿部任さんが救助隊員に真っ先に口にしたことは、自分のことではなかった。
「助けてください。家におばあちゃんがいます」
3月19日、その高田第一中学校校庭で、仮設住宅の建設が開始された。わずか36戸だが、震災後、初めて聞こえてくるモノをつくる音だ。かすかではあるが、そこに響いていたのは間違いなく、希望の音色だった。
※SAPIO2011年4月20日号