震災直後から全局が報道特番一色となったテレビ局。しかし、その内容といえば、扇情的な映像を繰り返すばかりで、本当に被災者が必要としている水や食料の配給場所などのきめ細かい情報が疎かになっていた。さらには、子供に親の安否を聞く無神経な取材、「爆発」と騒ぎ立て不安を煽る原発報道など、弊害多きテレビの現状をジャーナリストの勝谷誠彦氏が嘆く。
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東日本大震災、福島原発事故が起きて、もうすでにテレビというものに絶望してほとんどつけなくなっていた私だが、さすがに今は各局も報道人として命懸けでさまざまな場所からの情報を送っているだろうとスイッチを入れた。リモコンを投げつけてやろうかと思った。
『欽ちゃん香取慎吾の元気が出る仮装大賞!』、『いきなり!黄金伝説。/田舎で大家族農家体験/デビ夫人2泊3日生活』、『豪華スター同窓会SP/金妻・スチュワーデス・スクールウォーズも!』、『VS嵐/土屋アンナ参戦』。画面そのものは見るに堪えなかったので新聞のテレビ欄から引用したが、私にはほとんどの日本語が理解できない。その新聞の1面や最終面は、この国が滅亡の瀬戸際にいることを報じているのである。
これは悪夢なのか。私の頭がおかしくなっているのか。いったいどうやって人間としての心を棄てればこんな鬼畜外道になれるのか。
3月16日はテレビ東京で私が出ている『やりすぎコージー』という番組がオンエアされた。震災前に収録されたもので私には止めるすべがないのだが、申し訳なく、恥ずかしく、穴があったら入りたいと思っていた。指弾する声があがれば、平身低頭するつもりだった。それがまっとうな人間の感覚というものではないのだろうか。
※SAPIO2011年4月20日号