相撲協会は本場所再開を急いでいる。八百長問題の全容解明がほど遠い状況でありながら、特別調査委員会は「最終報告書」をまとめるという。震災の混乱に乗じて、何事もなかったかのように結論を出そうとする角界に、現役力士の間に蔓延る八百長を告発してきた大関・日馬富士の元付け人、雷鳳が憤る。
「今は日本中の誰もが、被災地の一日も早い復興を願っている。それは角界も同じはずだとボクは思っていました。でもその期待は裏切られた。震災で世間の目がそらされているうちに、角界はなし崩しに本場所を開催しようとしているようにしか見えない。
協会は何も反省していない。昨年問題となった野球賭博で解雇された琴光喜らだけでなく、角界では上から下まで賭博が公然と行なわれています。親方衆も同じ。しかも、震災のさなかにも力士御用達の『違法カジノ』に通い詰めているというのだから、信じられません」
本誌が最初に雷鳳から違法カジノの話を聞いたのは震災前のことだった。相撲部屋が多い東京下町のJRの駅近くの雑居ビルにその店はあるという。窓にはカーテンがかかっているのか、昼でも真っ暗で、中の様子を窺い知ることはできない。
3月上旬のある夜、そのビル近辺で見張っていると、雷鳳の言葉通り、次々と巨漢たちがやってきた。確認した限りでは4人。みな自転車に乗り、帽子やパーカーのフードをかぶるなどして頭部を隠し、周囲を気にしながら中に消えていく。数日間続けて張り込みを行なったが、ほぼ毎日、必ず夜9時から10時頃になると、力士と思しき人物がビルに吸い込まれ、日付をまたぐ頃まで出てこなかった。
「ここには高レートの裏スロットや、フィリピンと繋がっているインターネットカジノがあるんです。だいたいみんな1週間に1回は顔を出していると思います。多くの部屋は日曜は稽古が休みなので、土曜日の夜に行くことが多いですね」
雷鳳は本誌が撮った写真を見て、「これは●●部屋のI」、「○○部屋のK」と力士の実名を挙げていった。ほとんどが幕下以下の力士だったが、ある写真で雷鳳の手が止まった。
「これ……Xじゃないですか。横にいるのが付け人だから間違いない。八百長メールに登場した14人のうちの一人です。こんな時期によく来られますね」
Xは当初から八百長への関与を指摘され、29日に特別調査委から「クロ認定」されたと報じられた。撮影時は疑惑段階だったが、世間の厳しい目が向けられていた。Xの所属する部屋を訪ねたが、「協会を通してほしい」というのみだった。
※週刊ポスト2011年4月15日号