菅直人首相は1日午後、持ち回り閣議で今回の震災を「東日本大震災」と呼ぶことに決まったことを明らかにした。だが、決定するまで、各メディアには紆余曲折あったようで……。
たとえばNHKの場合はどうだったか。NHKのある職員は「今回の大震災の“名称”が局内でちょっとした話題になっているんです」と語っていた。
NHKは地震発生当初からこの震災を「東北関東大震災」と名付けていた。しかし、ほとんどの新聞・テレビは「東日本大震災」の名称を使っていたのだ(読売新聞は「東日本巨大地震」)。
地震の正式名称は気象庁の命名による「東北地方太平洋沖地震」。しかし、大規模な被害を出した地震は過去の例にならって「大震災」と冠せられる。3月11日の地震発生翌日の新聞では、共同通信加盟社が「東北・関東大地震」と表記したり、毎日新聞が3月14日まで「東北沖大震災」という名称を使っていたが、その後表記は「東日本」に“統一”された。しかしNHKだけが「東北関東」を頑なに守っていた。
この呼称について、NHK広報局は、「特に東北と関東で甚大な被害が出ていることから、この名称を使用しております。ただ、被害や影響の推移によっては、今回の地震災害の名称についても検討し見直す場合もあると考えています」と回答していた。
こうした「名称問題」は決して軽視できない。1995年の阪神・淡路大震災の際は、1月17日の地震発生後、翌18日朝刊から毎日新聞が他メディアに先駆けて「阪神大震災」の名称を使用。多くのメディアは地震の正式名称「兵庫県南部地震」をしばらく使っており、「関西大震災」や「神戸大震災」とする社もあったが、各社とも徐々に毎日新聞に追随し、1週間後にはほぼ「阪神大震災」で統一された。ちなみにNHKは、1月23日から変更、他社に後れをとっている。
ちなみに「阪神大震災」の名称は地震約1か月後の2月10日に閣議決定で「阪神・淡路大震災」と統一された。
※週刊ポスト2011年4月15日号