企業や家庭の節電努力の一方で、供給力アップに向けて明るい動きもある。鍵を握るのは中部電力の周波数変換装置である。
東電が西日本から電力支援を受ける際には、60ヘルツから50ヘルツへの周波数変換が必要だ。周波数の相違はもともと明治時代に東日本でドイツ製の発電機を、西日本でアメリカ製の発電機を導入したのがきっかけ。その後現在までこの問題は放置されていた。
中電が東電に電力を融通するには、静岡市東清水、長野県新信濃、浜松市佐久間の3か所の周波数変換装置を通す必要がある。現在の変換能力は100万キロワットだが、中電は変換能力の増強に急ピッチで取り組んでいる。
まず緊急的に東清水を3万キロワット増強することにし、5月には変換能力が向上する。将来的には30万キロワットにまで増強される予定だ。長野の泰阜水力発電所で50ヘルツの送電を可能にする工事をすでに行ない、2万~4万キロワットを融通。電源開発(Jパワー)の佐久間水力発電所などからの受電も50ヘルツに切り替え、約23万キロワットを融通し始めた。
東電と同じ周波数である北海道電力からは現状で60万キロワットの支援を受けている。東北電力はこの季節は東電と同様に計画停電を検討しており電力に余裕はないが、夏場の電力需要量は関東に比べてそれほど上昇しないので、余剰分は東電への応援が期待できる。
海外からも支援の手が挙がっている。
タイ政府は東電にガスタービン発電機2基を無料で貸し出すと3月29日に発表。三菱重工製で、ほぼ休眠状態だった非常時用の2基で24万4000キロワットの供給能力があり、8月中の稼働を目指すという。全体の設置面積は1基約1700平方メートルもの広さで、これだけの規模の海外移送は例がない。諸外国からのこうした申し出も今後出てくるかもしれない。
※週刊ポスト2011年4月15日号