東日本大震災でいま、日本人には何が問われているのか、世界は何に注目しているのか、落合信彦氏が分析する。
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未曾有の災害に襲われ、日本人の在り方が問われている。これまで、阪神・淡路大震災などの時も、日本人は略奪や窃盗に決して走らず、支援物資をきちんと列に並んで受け取ってきた。そういった秩序を重んじる日本人の姿は、世界中から賞賛されてきた。
今回の震災でも、日本人がそういった志を失っていないと信じたいが、ひとつ気がかりなことがある。首都圏で発生した食料やトイレットペーパーの買い占めである。自分だけが生き残りたいなどという薄汚い欲望は捨てねばならない。直接被災したわけではない人たちは、風評によってパニックを起こすよりも他にやることがあるはずだ。
今、日本人のヒューマニティが試されている。第2次世界大戦後の焼け野原から、驚くべき復興を見せた日本人の「鉄の意志」が未だに健在なのか、それとももはやマシュマロのような軟弱な精神しか持ち合わせない民族に成り下がってしまったのか。世界中が、そこに注目している。
菅直人をはじめ、政治のトップが頼りにならない状況だからこそ、我々は自分の良心と行動力を軸にせねばならない。限られた物資を分け合い、知恵を出し合って助け合うこと。半世紀前の日本人はそれをやっていた。
今こそ、再び日本の力を見せる時ではないか。被災した方々は大変な状況が続くが、被災地にいない日本人は必要以上に下を向く必要などない。日本経済が停滞すれば、被災地のために使われる税金を稼ぎ出すことすらできなくなる。
※SAPIO2011年4月20日号