国内

新聞社 震災時の新聞活用法に「焚き火をつけやすい」と提案

 震災後、新聞紙面の変遷について、メディアウォッチャーとして知られる八木秀次・高崎経済大学教授が注目していた点があるという。「朝刊一面の下段の新聞広告がいつ復活するか」だ。

 * * *
 震災報道の初日の12日付から、一貫して一面に通常通りのスペースで広告を載せ続けたのは日経だけで、ある意味、日経らしくてブレていない(笑い)。

 それに対して遅かったのが読売と朝日で、示し合わせたように3月25日付から復活させた。毎日はやっぱりユニークで、ほんの小さなスペースに圧縮し、初日の12日付に玩具メーカーの広告、13日付でNTTドコモの災害用伝言板の広告を載せ、14日付から通常のスペースに戻していました。

 要するに、一面広告の復活というのは、“非常時”から“平時”に戻るための第一歩なんです。広告は早く復活させたい。しかし、テレビでも公共広告機構のCMばかり流れているように、何か自粛しなければいけないような雰囲気があるから、どこで折り合いをつけるか。ここに各紙の“良心と打算”が現われているわけです。日経はこのジレンマから逃れるために、最初からシレッと載せている。

 毎日は「国難」や「国家的危機」という言葉を使わなかったように、非常時に見せかけて、実は最初から平時なんです(笑い)。

 新聞社は本心では早く平時に戻りたいと思っているはずです。安否情報や支援物資の情報などを伝えるには、速報性という意味ではテレビのほうが圧倒的に適していて、生活への密着性、ローカル性ではネットの方が適している。しかし、この大災害に際して、自分たちがどういう役割を果たすべきか、いまだに見えていない。

 それを象徴している記事が、産経が3月20日付から始めた「支援掲示板」というシリーズです。第1回目は新聞の活用法として、夜寒いときに服の中に入れると温かいとか、インクを吸っているので焚き火をつけやすいとか書いてある。これは新聞ではなく「新聞紙」の活用法で、自殺行為じゃないのか(笑い)。私は産経の記者に、「それなら朝日の方が厚いからいいじゃないか」といいました。

 まあ、これは冗談ですが、新聞の役割というのは、日本を再建するうえで必要な政策を提言したり、さまざまな情報を集約して読者に対して今はこうすべきだとアドバイスをしたりすることだと思います。そういった記事がまだ見当たらない。これは深刻です。

※週刊ポスト2011年4月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン