現在〈暴力団専門ライター〉として活躍する鈴木智彦氏は、最新刊『潜入ルポ ヤクザの修羅場』で日本社会を文字通り裏で支えてきた暴力団の実態を綴る。読者の大半がその筋の関係者だという専門誌では実在の団体や抗争を題材にした実録小説も人気企画の一つで、実6つまり〈実が6割〉が業界内の了解事項だとか。しかし実際は〈実2くらいが関の山〉だと鈴木氏はいい、意外な“実10”の内部事情を本書に明かす。
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鈴木氏は元カメラマン。ロスを拠点に活動中、安部譲二氏の元・舎弟だという食堂経営者〈愛ちゃん〉と出会い、また撮影中、地元のギャングに襲われたのを機にこの道に入る。動機は〈「暴力」への興味〉だった。
「僕自身は任侠映画の名作『仁義なき戦い』(1973年)も後々資料として一応見たくらいの世代で、暴力とは無縁に育ったごく普通の一般市民。それが〈ヤクザってのは、いい意味でも悪い意味でも、日本文化の縮図〉〈ヤクザを撮れよ〉と愛ちゃんに勧められ、帰国後に偶然『実話時代』の社員募集を見つけた縁で、この業界に入り早15年が経ちます。
最初は当然怖かったですよ。そのうち出先から編集部に戻り、〈●●組の▲▲様より電話有り。内容=殺すぞ〉と伝言メモがあっても特に驚かなくなった。実は殺すぞという時ほど殺さないのが彼らで、『ヤクザ=怖い』という幻想を自ら演じ、利用している部分もあります」
※週刊ポスト2011年4月15日号