【書評】『裂』(花村萬月/講談社/1680円)
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文芸誌『群像』編集者・羽田御名子は、担当する作家の卵・安良川王爾の新作の主人公に自分の名が使われているのを見て愕然とする。〈この男の頭のなかで私は覚醒剤の奴隷にされ、経血で汚れた股間をさらし、前歯を蹴り折られ、歯茎ごと前歯を抜かれたのか〉。だが、不思議な魅力を持つ王爾は、同じく小説家志願の彼女の恋人との関係に微妙な亀裂を感じさせるようになり……。作家・文芸・出版界の一面を実名で赤裸々に綴る禁断の問題作。
※週刊ポスト2011年4月15日号