次々に新たなトラブルが発生する福島第一原発。これに対し、自力で対応しきれなくなった東京電力の要請で、米国やフランスの専門家が日本に派遣されている。米国は104基、フランスも59基の原子力発電所が稼働する世界1位と2位の原発大国。日本は54基でそれに次ぐ世界3位だ。
フランスは原子力への投資を続け、いまでは電力の80%を賄うまでに達している。政府は年3~4回、原発に関するシンポジウムを開き、子供向けのクイズショーを行うなど、PRに躍起になっている。しかし、日本と異なるのは、言葉で「安全」というだけでなく、危険性を認識したうえで万全の備えをしようとしている点だ。フランス在住ジャーナリスト・宮下洋一さんはこう話す。
「フランスでは、原発で事故が起きた場合には5分間にわたってサイレンが鳴ることになっています。そのときは急いでドアや窓や換気装置を閉めることが、地元住民に徹底的に周知されています。半径10km圏内に住む住民には、ヨード剤も配布されています。最悪のケースを考えた緊急の対応策も用意してあるんです」
ヨード剤とは、ヨウ化カリウムのこと。服用すると、放射能に含まれる強い発がん物質「放射性ヨード」が体内に取り込まれるのを防ぐ効果がある。予防としてのんでも、放射線を浴びた後にのんでも、いずれのケースにも有効だとされる。そのことが周知されているフランスに比べ、日本では福島原発事故に関する報道で、初めてこの薬品名を知った人も少なくないのではないだろうか。
※女性セブン2011年4月21日号