インターネット経由の各種の情報サービスは、地震発生直後から大活躍した。携帯キャリアが提供する安否確認ダイヤルはもちろん、ツイッターやフェースブック発の連絡網が、行政や救援の医療チームを動かしていた。
今回の震災ではっきりしたのは、自治体や行政の指揮系統が崩壊している環境下では、個人ベースの「下からの」情報網が力を発揮するということだった。
特筆すべきは「スカイプ」というインターネット経由のテレビ電話サービスが、まったく「落ちなかった」ことだ。だから、スカイプ上では、被災地からの同時多発の動画音声が、リアルに(バッテリーが途切れるまでの間ではあったが)流れてきた。驚きだ。
無論、デマやチェーンメールも大量に発生した。私のところにも、かなりの数の不規則情報メールが来た。それも、知人のアドレスを介して。
でも、デマの温床になるということは、それだけ柔軟な潜在能力を持っているということでもある。切れない包丁は安全だが、料理にも使えない。大切なのは、デマを見抜く目だ。どうせ無くせないのだからして。
ちなみに計画停電については、東京電力の公式ホームページが型通りに役立たずであった(間違いだらけで、改訂告知が曖昧で、しかも度々接続不能だった)のに比べて、ユーザー発の非公式な情報ツールが素晴らしいフットワークを持ってネット上に発生した。当然、それらは絶大な威力を発揮した。こういうケースは、たぶんわが国でははじめての例だと思う。
まず、東電による公式発表の数時間後に、「停電エリア検索システム」と呼ばれる検索ツール(携帯でも利用可)がネット上にアップされた。これは、利用者が任意の地名を入力すると、その町名が計画停電のどのグループに属しているのか(あるいはどこにも属していないか)を回答してくれる無料ツールで、ツイッターを通じて関東全域に瞬時に紹介流布された。
ほどなく、「計画停電マップ」(グーグルマップを利用した計画停電の地図)「計画停電カレンダー」(グーグルカレンダー上に、各グループの停電予測時間を自動で書き込むツール)がこれまたボランティアの手によって、無償提供され、順次改良されつつ、現在に至っている。
素晴らしい。
震災の年、2011年は、情報ボランティア元年ならびに地域情報民主主義発足の起源でもあったと、将来、そんなふうに振り返ることができたら幸甚だ。笑顔で振り返るには、まだ時間が必要ではあるのだろうが。
※SAPIO2011年4月20日号