震災後も長く恐怖体験に苦しめられるなど、多くの被災者が心の不調を訴えた16年前の阪神大震災。その反省からメンタルヘルスの重要性が叫ばれている。
慶応大学保健管理センター・大野裕教授は、こう話す。
「『頑張りましょう』といった励ましが、かえって負担になることがあります。過酷な状況の中で自分なりに『頑張っている』人への安易な励ましは酷というものです。『何かお役に立てることはありませんか?』という具体的な支援を問い掛けるべきです。『心のケア』が話をして気持ちを解きほぐすことだと考えるのは誤解です」
外から来た人間が「お気持ちはわかります」と同情するのも禁物だ。被災したときの状況を聞くのも傷に塩を塗るようなことになるので避けたい。肝心なのは支援を無理強いすることではなく、被災者の望むことを被災者自身が話すように誘導し、その希望を叶えてあげることだ。
米国立PTSDセンターなどがまとめた「サイコロジカル・ファーストエイド」によれば、次のような点に注意すべきとある。
・被災者の体験を勝手に決めつけない。
・すべての被災者が心の傷を受けているわけではない。
・被災者の不眠や悪夢は当然の反応なので、ことさら「症状」と呼んで病人呼ばわりしない。
・すべての被災者が話したがっているわけではない。
「日常的には寄り添い、見守るという姿勢が大事。ただし、体調の急激な悪化や極端な無気力化といった大きな変化があるときは早急に対応しなければなりません」(大野教授)
※週刊ポスト2011年4月15日号