被災地の荒れた道路で、灯のない暗闇の街をパトロールするのは危険も伴う。不測の事態に備えるため、自警団の多くは荷台に鉄パイプを積み込んでいる。地元住民の中には、自警団が鉄パイプを携行していることに対して、「警察でもないのに、行き過ぎでは?」と訝る声もある。仙台市宮城野区蒲生地区で自警団を結成した二瓶透さんがいう。
「鉄パイプは護身用のために持っているに過ぎない。基本的には、犯罪行為を眼にした場合は警察に連絡するようにしています。こちらが怪我をしたり傷ついたりしては大変。見守っているという事実で威圧感を与えられればと思っています」
一方、岩手県のある港町では自警団によるトラブルも報告されている。震災後、救援活動をするため現地に入り、自警団にも帯同していたというNPOスタッフのKさんが証言する。
「この港町も津波で壊滅的被害を受け、治安が悪化していました。そこで無事だった消防団のメンバーが、倒壊した家屋の多い地域を中心に巡回していたんです。トラブルが起こったのはパトロールを始めて2日目のことでした――」
深夜1時を回った頃、自警団は倒壊家屋の前に停まった不審車を発見した。家の中を覗くと、40過ぎの男が部屋を物色している。
「あいつ、誰だ?」
こちら側に気づくと、そのまま男は逃げようとした。
「火事場泥棒か!」
自警団5人は、男を取り囲んだ。すると男は手に持っていたバールを振り回す。
ただし、5人も護身用に鉄パイプを持っている。大立ち回りの末、男は自警団に取り押さえられたという。
問題はその後だった。
「男に対して5人は殴る蹴るの暴行を加えたんです。男は既に無抵抗だった。私は『もう、やめないと危ない』といったんですが、自警団のリーダーは『おう、こんな奴、死体にして転がしておいても、今ならわからんだろう』って。相当熱くなっていました」
結局、その場はKさんが諫め、後から呼んだ警察によって事態は収束に向かった。先に男がバールで暴れてきたため自警団側に“お咎め”はなかった。
※週刊ポスト2011年4月15日号