八百長問題に絡んで、協会理事の北の湖(元横綱)、九重(元横綱・千代の富士)、陸奥(元大関・霧島)の3親方が理事を辞任したが、来年2月の理事改選に向けて俄然注目を集めているのが、貴乃花親方(元横綱)だ。
貴乃花親方は、八百長騒動以前に、すでに一門制の“呪縛”を打ち破っている。2011年1月、自らが所属する二所ノ関一門を離脱、「無所属」で理事選に立候補し、若手親方たちの支持を得て理事の座を射止めた。
今回の大量処分の背後でも、貴乃花親方自身が積極的な動きを見せていた。
中でも注目されたのは、「理事の補選」提案である。今回、理事3人が処分を受けた影響で、外部2人を含めて、理事は定数ギリギリの9人となった。協会の運営に支障を来す可能性があるというのが提案の表向きの理由だが、「狙いは他にもあった」と貴乃花派の若手親方が明かす。
「補選を行なうことで、一気に一門制(角界の派閥)を崩壊させるチャンスだった。これまでは一門ごとに理事の数が決まっていたが、有力者が見あたらない今、補選で前例を崩してしまえば、改革につなげることができる。だが、なんとか一門制を死守しようとする守旧派には受け入れられなかった」
放駒理事長は貴乃花親方の提案を却下。残った理事が職務を兼任して運営することが決まった。
貴乃花vs放駒理事長のサヤ当てはこれだけではない。
貴乃花が力士の処分について、「罪を軽減させ、チャンスを与えてやれないものか」と持ちかけたところ、放駒理事長は「何を格好つけているんだ。あんたも理事会にいたじゃないか。いまさらそんなことをいうな」と怒鳴りつける。
貴乃花が、「震災の被災地に炊き出しなどのボランティアを認めてほしい」と頼むと、理事長は「スタンドプレーは認めない」と門前払い。それではと貴乃花が個人としてボランティアに行ったところ、理事長は「いい加減にしてもらいたいものだ」と吐き捨てたという。
※週刊ポスト2011年4月22日号