国内

日本の女子大生の「就活事情」を外国籍学生らが英語で激論

 ハーバード大学のマイケル・サンデル教授といえば「白熱教室」で知られるが、日本の大学でも全編英語でやり取りされる「白熱教室」がある。東京・四谷にある上智大学を訪れ、授業の様子を見学した。

「Today, we are moving on to topic of the Feminism(今日は、フェミニズムについての話をしていこう)」

 上智大学国際教養学部の中野晃一・准教授は、「Modern Western Political Theory(現代西洋政治理論)」の講義をそう切り出した。
  
 中野氏によれば、受講生は3~4年生が大半を占める。そのためか、学生たちの発言には「就職活動(job hunting)」という言葉が頻繁に登場する。現在進行中の自らの経験に引き付けて意見を述べ、問題点を炙り出そうとしていた。

女子学生A:「年輩の男性に話を聞くと、女性を雇いたくないことがよくわかる。彼らは『女性は出産や育児で会社を辞めてしまう』としきりに言います。女性を雇うことはリスクだと考えていて、できればそんなリスクを取りたくないと考えている。今、就職活動中ですけど、面接でも『結婚したいのか』『結婚したら仕事を辞めるつもりか』と聞かれることだってあります」
 
 複数の女子学生がうなずいて同意を示す。
 
 次に発言したのは外国籍の男子学生だった。この講義では、約30人の受講生のうち、4分の1が外国籍の学生だ。出身国はアメリカ、韓国、メキシコなど、多岐にわたる。

男子学生B:「僕のガールフレンドも今、就活をしていて、ある会社の説明会で現役女性社員に話を聞いていた。その社員はとても優秀らしいけど、女子学生たちに『もし、結婚して子供を作りたいなら、そもそもうちの会社を志望しないほうがいい』と言っていたそうです。ガールフレンドは言っていましたね。『あの会社では働きたいけど、将来あんな女性にはなりたくない』って(笑)」
 
 教室が笑いに包まれる。

男子学生B:「日本で女性が働こうとしたら、いろんな事を諦めないといけないようですね」

中野:「そういう犠牲が強いられることについて、どう思う? 働く女性は、家庭か仕事かの二者択一をしなければならないのだろうか」

男子学生B:「会社が合理性を求めれば、そうなるかもしれない……男女に生物学的な違いはあるわけだし。もし、女性が家庭と仕事を両立させようとするなら、会社からある程度、“特別待遇(special treatment)”をしてもらわないといけないと思う」

中野:「“特別待遇”面白い視点だね。この点については後でもう一度触れよう。他の人はどうかな?」

女子学生C:「教育の問題があると思います。女の子は小さい頃から家でバービー人形で遊び、男の子は外で体を動かす。仮にそういう遊びが好きじゃなくても、なんとなく輪に入らないとおかしく見られる。そういう環境から、外で働くのは男性、という規範が内面化されているのではないか。教育の過程で、ジェンダー・ステレオタイプが生み出されている」

 日本人学生の中にも、海外生活が長かった学生もいれば、ハーフの学生もいるという。それぞれの経験を土台とした発言は、多種多様だ。

女性学生D:「理数系に進む女性って少ないですよね。文学部とか、そういうコースに進む人のほうが多い。これは、アメリカの話ですが、まず小学校の女性教師があまり理数系の科目を教えることが得意じゃないように見えます。さらに中学、高校に進むと、理数系の科目を専門で担当するのは男性教師がほとんどで、女性教師は文系科目の担当が多い。そういう教師の偏在は女性の進路に影響を与えていると思う」

※SAPIO2011年4月20日号



関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン