東日本大震災で国交省が復興事業を取り仕切るために動き出した。「業担」と呼ばれる公共事業の業界調整役を長く務めてきた準大手ゼネコンの営業幹部が語る。
「阪神大震災の時は、倒壊した高速道路などを元通りにする復旧工事が中心だったが、今回はゼロからの町作りだ。そこで国交省は、OBがいる外郭団体や民間コンサルタント会社に復興構想会議や復興庁の計画づくりを下請けさせ、業界全体の調整を行なう仕組みを考えている」
こうした30兆円復興利権は、与党時代に公共事業で政治資金を得てきた自民党の大物議員には垂涎の的だ。だが、いくら被災地復興に参画したくても、民主党がNOといえば、役所は動かない。それが政権党の強みというものだ。
自民党内で古賀誠元幹事長など建設族が大連立を推進していることも、与党として復興事業に加わりたい狙いが透けて見える。
元自民党幹事長で、農業土木事業を仕切る全国土地改良事業団体連合会会長の野中広務氏は、この3月末、政界引退した身ながらわざわざ自民党に離党届けを出した。野中氏は仙谷由人氏とのパイプが太く、大連立構想にも一枚噛んでいると見られている。同連合会は津波で冠水した農地の再生事業を担うことになることから、復興予算獲得のために民主党に“忠誠”を示すパフォーマンスにも見える。
復興事業の司令塔となる震災復興相は、被災者のための重要な職責を担うと同時に、巨大な政治利権を手にすることができるポストである。民主党内では仙谷氏や被災地を選挙区とする玄葉光一郎・国家戦略相、安住淳・国対委員長など多くの議員が復興相就任に意欲を持っているとされ、本来なら震災直後に一刻も早く決めるべきなのに、菅直人首相が連立条件として自民党にこのポストを提示したことは、いわば利権と政権を取引する政略だった。
※週刊ポスト2011年4月22日号