「メディアで原発について解説する専門家は御用学者ばかりだから、『安全』と繰り返すばかり」……ネット上にはこうした意見が数多く出ている。だが、ことさらに『危険』を訴える「専門家」が多いのもまた事実だ。彼らの発言を検証してみよう。
『週刊現代』の4月16日号「溶け出した福島第一原発『第3の恐怖』」では、福島第一原発の基本設計を担当した米GE社の元設計師・菊地洋一氏が登場している。
菊地氏の現在の職業は写真家。東海地震がすぎるまで浜岡原発を止めておくように訴える活動のため、2002年10月から2003年9月まで静岡県函南町に居を移したこともあるという。
その菊地氏は3号機の写真を見て、水素爆発とは異なる重大な事態が起きたと指摘。〈プルトニウムを含むMOX燃料を使っていた3号機では、大きな熱を発した。この事実とその原因を、まだどこも指摘していません〉と、MOX燃料と何か関係があることをほのめかしつつ、結局、何が起きたのかについての説明は一切ない。
MOX燃料は得体の知れないものだという恐怖感だけを植え付けて終わるのである。後の検証ではっきりするはずである。
元東芝の原子炉設計者である後藤政志氏も、メディアによく登場している。ニッポン消費者新聞3月30日付では〈格納容器は安全の最後の砦。それが壊れ、出てはいけない放射性物質が出た〉と舌鋒は鋭い。
後藤氏は、「原子力資料情報室」のアドバイザーでもある。この組織は、成田空港の三里塚闘争を率いた活動家、高木仁三郎氏(故人)が設立した反原発団体である。
もちろん専門家はそれぞれの研究と見識を基に、責任をもって発言していることを疑うものではない。問題はそれを受け取る我々の側が、これは“人類が初めて経験する事態”であること、従って誰の見解が正しいのか結論はずっと先にならないとわからないことを認識しておくことだ。
※週刊ポスト2011年4月22日号