貧血のトカゲや大腸がんのヘビ、白血病の猫など、多様化するペット医療。その驚愕かつユニークな治療現場を綴った奮闘記『珍獣の医学』(扶桑社)の著者である、田園調布動物病院院長の獣医師・田向健一さん(37)によると、困ってしまうのは、いくらペットのことを思ってアドバイスをしても、受け入れてくれない飼い主だそう。
「川や池など本来、水の中に生息しているミドリガメを、部屋の中で放し飼いする人がいるんですね。そうすると、水分不足から、甲羅は反りかえり、腎不全になりやすくなる。飼い主さんにとっては、水槽の中に入れるのは狭くてかわいそうだという、ある意味の“思いやり”なんですが、カメにとってはありがた迷惑でしょう。狭いところはかわいそうという気持ちも、わかるのですが…」
「かわいそう」という気持ちをもう少し深く掘りさげてほしいと田向さんはいう。例えば、道端に落ちていたとハトを連れてくる人がいる。
「みなさん、善意で連れてくるんです。当然、優しい人だと思いますよ。でも治療しても完治しないことが多いんです。“もう飛べないですから、家で飼ってあげてください”っていうと、“えっ? 私、飼えない”って。拾うときに考えなきゃいけないのではないかと思うんです。“救ったのはいいけど、誰が面倒をみるんだろう?”というところまで考えてほしい。“命を飼う”“命を救う”というのはどういうことかってね」
※女性セブン2011年4月21日号