学校で習った英語を、きちんと文法通りに話す――それがビジネスの現場では、思わぬトラブルを引き起こしかねない。同時通訳者・関谷英里子氏が解説する。
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(1)「月曜の朝までにお返事をいただきたい」
<NGフレーズ>
Please reply to this e-mail until Monday morning.
<OKフレーズ>
It would be great if you could give us a reply until Monday morning.
中学校で習ったpleaseを多用するのは、ビジネス上では慇懃無礼と思われたり、懇願しているように聞こえてしまう場合があります。NGフレーズは、いわば「返事してよね」といったニュアンスで聞こえ、尊大な態度をとっていると誤解されるかもしれません。先ほどのケースと同様、 It would be great if~を使えば大丈夫です。
(2)「我々は1万台を目標としています」
<NGフレーズ>
We will do our best to sell 10,000 units.
<OKフレーズ>
We aim to sell 10,000 units.
全力を尽くす、頑張りますという意味で学校で習った「do our best」。実は、社会人1年目に私自身が経験した忘れられない「NGフレーズ」です。
外国人の仕事相手に「(期待に応えられるよう)頑張ります」と伝えようとして、「We will do our best」と言った瞬間、「あなたの尽くすベストに興味はない。結果を出せ」と厳しく言われたのです。
こうした場合、「aim」を使ったほうが、目指す先に「結果」がある印象が伝わります。狙いを定め、計画を立てて実行する、という印象を与える言葉です。
(3)「もう少しゆっくり話していただけますか?」
<NGフレーズ>
I am not good at listening.
<OKフレーズ>
Could you speak a little slower?
相手が話す英語が聞き取れない時、「ヒアリングが苦手なので……」と伝えるケースです。よく、「I am not good at listening」と言う方がいますが、これは「私は人の話を聞くのが苦手です」というニュアンス。注意散漫な人、一方的に話す人という印象を与えます。「苦手」とわざわざ言う必要はなく「ゆっくり話してください」でいいのです。
ビジネスの現場での英語は学校で習う英語と違い、「和文英訳」の発想になってはいけません。ネイティブの方と英文メールをやりとりする機会も増えていると思いますが、それは「ネイティブの感覚」を磨くチャンスです。相手がどんな言葉を使っているのか、改めてチェックして、自分でも使ってみてください。
※SAPIO2011年4月20日号