竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「『ペット可』だから借りたマンションなのに、入居したら禁止だといわれました」と、以下のような質問が寄せられた。
【質問】
マンションを借りるとき、ペットを飼ってもよいと業者がいうので決めました。しかし、入居してから、ペット禁止だと居住者から教えられました。仲介業者がうっかりしていたのです。重要事項説明書も受け取っていません。業者のミスです。解約して引っ越す場合、どの程度の費用を請求できるでしょうか。
【回答】
引っ越し代と、無駄になった費用が損害賠償の対象になるでしょう。宅建業者は、宅地建物取引業法35条1項により、取引にあたって重要事項を説明する義務があります。分譲マンションを借りる場合と、賃貸マンションへの入居では、根拠条文が違いますが、いずれも用途その他の利用の制限に関する規約の定めや内容が説明事項とされています。
従ってペット飼育禁止などの管理規約があれば説明対象になりますから、業者は宅建業法上、ペット飼育の制限があれば説明しなくてはなりません。
業界の標準書式でも、ペット飼育の禁止、ピアノ使用の禁止等の利用制限などの有無について記載して説明する欄があります。当該業者は説明しなかったどころか、間違った説明をしたのですから、責任は否定できません。
もっともその場合、正確な説明をしなかったという証明が問題になります。まず、業者は重要事項説明書を渡していません。重要事項説明書には、前記のとおり利用制限の欄があり、そこにペット禁止と書かれていて、説明書にあなたの受取の署名があれば何もいえませんが、そもそも重要事項説明書がないのですから、業者が正確に説明したといい逃れるのは困難でしょう。
それだけではなく、宅建業者の重要事項説明書不交付は業法違反です。また、あなたからペット飼育の可否を問われて、事実と反することを知りながら、契約させるために飼育できると説明したとすれば、罰則の適用もある違法行為です。監督官庁から業務停止などの処分を受けることもあり得ます。
こうした説明義務違反があったため転居を余儀なくされれば、引っ越し代のほか、仲介手数料、礼金等、無駄になった費用の賠償を請求できます。ただし、居住していた間の家賃は請求できません。
※週刊ポスト2011年4月22日号