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経産省幹部「法的には東電の震災の損失は利用者転嫁できる」

 すでに政府は「安易に免責等の措置が取られることはない」(枝野幸男・官房長官の3月25日の発言)と表明しており、「原子力損害賠償法の例外規定(※1:下記参照)を適用して、賠償金全額を税金で肩代わりする可能性はなくなった」(経産省幹部)と見られている。
 
 だが、数兆円とされる賠償金や、数千億円といわれる福島第一原発の廃炉コスト、さらには新規に発電するための火力発電所建設などの費用は、必ずしも東電が“自ら血を流して”捻出するとは限らない。電力会社の電力料金は、発電や送電に要したコストに一定の利益(現在は3%)を上乗せして電気料金が決まる「総括原価方式」が採用されているため、あらゆるコストを上乗せできる。

「電気事業法の解釈では、代替の発電所はもちろんのこと、賠償金も廃炉費用もコストに組み込まれるだろう。東電が震災に伴う損失をすべて利用者に押しつけることは可能だ」(経産省幹部)

 枝野発言と同じ日に、与謝野馨・経財相は首相官邸で開かれた電力需給緊急対策本部で「料金体系を変えるべき」と発言。名うての電力族議員として知られる与謝野氏の発言だけに、「賠償金を電気料金に転嫁しろというサインだ」との憶測を呼んだ。
 
 一方、政府内には東電の「一時的国有化」を主張する声もある。

「賠償問題に対応するために国が東電の株式を買い支え、資本の整理をしてから再び民営化する。ただし、その際には原発を中心とする発電部門はそのまま国有化を続け、東電は送配電業務に集約する案が検討されている」(前出の経産省幹部)

 これだけの危機だからやむを得ない策でもあるが、これに仰天したのは当の東電ではなく関電だった。

「東電が発電と送電に分割されれば、関電も発・送・配を独占する正当性がなくなる。特に、東電の原発を国が管理することになったら、関西電力の管内でも“民間ではなく国の管理にしてほしい”という声が上がるのは確実だ。東電の再建プランは、関電の存続さえも危うくしかねない」(関西財界の有力者)

 政府内では他にも「東電の完全国有化論」や「国鉄清算事業団方式(※2:下記参照)」などが提案されているが、方針が決まるのはまだまだ先になりそうだ。

※1:同法では事業者(今回は東電)に無制限の賠償責任を定めているが、3条1項に「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」の場合に免責される規定がある。

※2:1987年に分割民営化された国鉄は、鉄道業務を行なうJR各社と、債務の償還や余剰人員の再就職促進を行なう国鉄清算事業団に分割された。東電にこの方式を採用し、電力業務を担当する法人と、賠償金支払いや廃炉を担当する法人に分割る案が検討されている。

※週刊ポスト2011年4月22日号

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