NHKの人気番組『英語でしゃべらナイト』の司会を、2009年まで2年にわたり務めた俳優の八嶋智人は当初、英語はまったくと言っていいくらいできなかったという。司会に抜擢されてからというもの、悪戦苦闘の連続。そんな中で培われた“八嶋流・英語克服術”を公開する。
* * *
上達する方法や動機は人それぞれ見つかっていくもの。僕の場合、格好よくしゃべりたいから、ネイティブの人が会話中によく使う格好いいフレーズをマネした。やたら「Actually(実際さぁ)」と言ってみたり(笑)。
下手なりにでも積極的に話していると、単語を覚えたり発音が上達したりする。そこから英語の世界が一気に広がる瞬間があります。
単語や文法、発音など、いわゆる勉強らしいことは、収録以外の時間で、ニンテンドーDSの学習ソフトを使ったくらいです。
むしろ、英語でコミュニケーションするしかない場面に何度も放り込まれた経験から、「箇条書きで英語の自己紹介を用意しておく」というやり方をお勧めしたいです。
日本人であること、名前、住んでいる場所など、単純なことから始めて構いません。趣味でも家族のことでもいい。だんだん、そこから派生させていく話を英語で考えるんです。例えば、「子供が生まれた時に、こんなことを感じたんだ」とか。
これは、出合い頭の自己紹介の時に全て言うのではなく、会話のやり取りの中に混ぜ込んでいく。自分から話を広げていけるようになるんです。
もちろん相手のことも考えます。番組でマレーシアに行った時は、子供達に会うというので、ツカミに「I’m a very famous actor in Japan」といったフレーズを用意してみたり。アジアでも人気の「ドラえもん」を意識して「僕はのび太だよ」と言ってスベったりしました(笑)。
マレーシアは公用語のマレー語とは別に英語が広く浸透しており、学校では英語を熱心に勉強しています。そして、母国語と混じり合った独特の英語をしゃべっています。番組を通して聞きかじった話ですが、今世界では、各地の訛りを持った英語、あるいは現地語と混ざり合った英語の価値を積極的に認める流れにあるようです。
日本では、恥じらうとか遠慮するといった価値観が良しとされてきて、そういう美徳は大事だとは思います。しかし、同時に英語を使ったコミュニケーションでは、「思っていることは積極的に表現する」という姿勢もまた大事。ネイティブの発音とは違うジャパニーズ・イングリッシュでも恥じることはないんです。
俳優としての仕事で言えば、海外の作品に参加したとしても、求められるのはアジア人の役や、ネイティブ並みの英語を求められない役かもしれない。でも一方で、そういう役柄でジャパニーズ・イングリッシュにしかできない表現だってあると思います。
※SAPIO2011年4月20日号