日本の東日本大震災に対する韓国人たちの慰め、同情、支援、心遣いがすごい。マスコミの報道はもちろん、官民挙げて「日本を救え」運動が大々的に展開されている。こんな現象は16年前の阪神淡路大震災の時もなかった。韓国で何が起きているのか、産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏はレポートする。
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今回の震災で韓国メディアからインタビューを受けたのだが、韓国での日本救援キャンペーンを背景に「これをきっかけに日韓はもっと仲良くなるのでは?」といわれた。
このあたりは韓国人らしい(?)性急さかもしれない。「われわれがこんなに日本のことを思っているのだから、日本も当然それに応えるはずだ」というわけだ。官民挙げてのありがたいお見舞いと救援には感謝するしかない。質問に「ノー」とか「?」はありえない。答えは当然「そう期待したい」となる。
韓国人は、日本人に比べるとはるかに“情緒的”だ。あるいは、感情的で感傷的だ。感情に正直というか。日常的にも、人の不幸は黙って見ておれないところがある。
韓国人の美質だが、こうした“情”は時には一方的で押し付けがましくなる。これでもか、これでもか、というわけだ。今回の“情”に日本はどう応え、その行方が日韓関係の今後にどう影響するのか、ウォッチャーには興味深いポイントである。
メディア・インタビューの中で奇妙な質問があった。これも押せ押せの“情”と関係する。「元従軍慰安婦たちも日本への抗議を中断し、お見舞いと支援を語っているが、どう思うか…」というのだ。
元慰安婦の老女たちはこれまで毎週、支援団体とともに日本大使館前で抗議の反日デモを続けてきた。しかし大震災を機に抗議を中断し、逆に日本支援を訴え、それが韓国マスコミに大きく紹介された。「恩讐を越えた美談」ではあるが、答えはつらい? そこでこう答えておいた。
「ありがたい話だが、韓国マスコミがそれを大きく報道するのはどうか。領土問題もそうだが、今回の大震災と歴史問題は関係ないはず。そうした話が日本に伝わると、逆に日本人の間で韓国からの慰労や激励、支援など純粋な善意と友情に疑問を抱く人が出るかもしれない、そうなると残念だ」と。
何はともあれ、せっかくの友情に勘ぐりは避けたい。ぼくは現地で韓国の支援に大いに感謝し、感動している。
※SAPIO2011年4月20日号