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大前研一「私が官房長官ならホウレンソウはよく洗えという」

 菅首相は3月21日、福島、茨城、栃木、群馬4県の知事に対し、4県全域で生産されたホウレンソウとカキナ、福島県産の原乳について「当分の間、出荷を控える」よう指示した。しかし、経営コンサルタントの大前研一氏は、これを「ミス」と指摘する。

 * * *
 出荷を控えるようにとの指示は、茨城県産のホウレンソウと福島県産の原乳から食品衛生法の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたという理由によるもので、枝野幸男官房長官は記者会見で「直ちに健康に影響を及ぼすものではない。出荷制限措置は、暫定規制値を超える状態が長く継続することは好ましくないため決定した」と説明し、「過剰な反応のないよう、冷静に対応をしていただきたい」と呼びかけた。

 だが、これは説明の仕方を間違えている。出荷停止という異例の措置を発動しておきながら過剰反応するな、というのは矛盾そのものである。
 
 私が官房長官だったら、「年間許容量を超える放射線がホウレンソウから検出されました。ホウレンソウを毎日1年間にわたって食べると、問題が出るかもしれません。念のため、食べる時はよく水洗いをするなど、ご注意ください」と説明する。これで十分だ。暫定規制値とはその程度の目安にすぎない。

 そして生産者に対しては「出荷するロットごとに検査を受け、暫定規制値を大きく超えたロットは出荷を手控えてください」と要請する。なぜなら飛散する放射性物質には、その時の風向きと天候により、たまたま特定のところで高く検出されるというケースもあるからだ。もちろん常に数値が高ければ出荷停止にすべきだが、その後の放射線量は徐々に下がっている。にもかかわらず出荷停止を継続しているため、外国が日本の農産物全体の輸入を禁止するという事態になっている。

 出荷停止で農家などが受ける損害に関して枝野官房長官は「適切な補償が行なわれるよう万全を期す。東京電力が責任を持つが、十分でないなら国が責任を持つ」と述べた。もちろん今回の原因を作ったのは東電だが、被害を拡大したのは政府の発表の不適切な表現だ。出荷停止という重大な発表する時は、誰にどのような影響を与えるか、熟慮に熟慮を重ねるべきだった。

※週刊ポスト2011年4月22日号

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