未曾有の大震災で傷ついた日本。復興の先にさらなる飛躍をするためには何が必要か。大前研一氏が「大転換」を提案する。
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さらなる日本経済の活性化のためには、今回の大地震を契機に、中央集権から地方分権に統治機構を大転換することを提案したい。
具体的な方法は、今、ローカルに大きな支持を得ている“変人知事”や“変人市長”のパワーを利用し、道州制移行に向けた第1ステップとして5つの「都」「州」を作るのだ。橋下徹大阪府知事の「大阪都」(できれば京都と合併して「本京都」)、河村たかし名古屋市長の「中京都」、泉田裕彦新潟県知事の「新潟州」、そして県内に政令指定都市が複数あり、その市長と知事の仕事がダブっていて非効率な「福岡都」「神奈川都」だ。
この5つの「都」「州」それぞれに世界からヒト、企業、カネを呼び込んで自立する“経済繁栄ビジョン”を描いてもらう。自立するために必要な権限は、すべて中央から移譲する。
たとえば、建築基準法、市街化調整区域、緑地法などの許認可権を、国から「都」に渡して土地利用の規制を大幅に緩和し、住民が納得する安全・安心の街づくりを推進する。そのための財源が必要になるから起債の権限も「都」や「州」に移譲する。
今のところ“変人知事”と“変人市長”は、マスコミ操縦術に長けているだけで、世界から富を呼び込んで地域を繁栄させるための知恵は何もない。その知恵を引き出すためには、国が先手を打ち、イニシアティブをとって権限を移譲すべきなのである。そうすれば、彼らが本物のリーダーかどうかも、すぐにわかる。
もし「福岡都」なら、アジアに進出している世界企業の「エンジニアリングサポートセンター」として海外の資本を集めることが可能だろう。福岡からは、東京よりもソウルや上海に行くほうが近い。北京までも、直行で約1時間半の距離だ。この地の利を活かし、アジア進出企業の拠点として生まれ変わらせることができるはずだ。
これまで地方自治体の仕事は「霞が関に陳情に行く」ことだった。そのため、たとえば福岡市と北九州市のように隣り合う市町村同士が、東京からカネを引っ張ってくるための“予算分捕り合戦”に明け暮れていた。それを「霞が関に陳情に行く」のではなく、福岡と北九州が「福岡都」として一体となって「海外に営業に行く」ように構造を変えるのである。
※SAPIO2011年4月20日号