ACのCMに代表されるようにテレビでは「がんばろう」「前を向こう」といったメッセージが繰り返し流されている。だが、当の被災者からは、戸惑いとともにこんな声が聞こえてくる。
「当初はとにかく家族や家をなくして茫然自失だったので、何か声をかけてもらえるだけで嬉しかった。でも、長引く避難所生活のなかで“がんばって”といわれても、どうがんばればいいのか。他人事だからそんな風にいえるんだって、正直、ムカついてくる」(30代男性)
「東京も随分と揺れたらしいけど、家もあるし、電気もガスも水もある。自分は安全地帯にいて、現地のことを何も知らない人に“一緒にがんばろう”なんていわれても、嫌な気持ちになるだけ」(40代女性)
もちろん「がんばろう」というメッセージは善意から発せられたものだ。被災者もそれを理解しているがゆえに、“心の声”が表に出てくることはない。
日本中にあふれる励ましの言葉。しかし、そうした「非被災者」の言葉は本当に励ましになっているのだろうか――。 宮城県南三陸町の佐藤徳憲総務課長が語る。
「この間、県の保健士さんのカウンセリングがあり、“知らないうちにがんばりすぎてるから、とにかく休みなさい”といわれました。自分では、今の状態ががんばっているのかどうか、よくわからないんです。(亡くなった)職員たち一人一人の顔が浮かんできて、精神状態が正常なのかどうかも、よくわからない」
※週刊ポスト2011年4月29日号