避難指示区域となった福島第一原発20km圏内の街は今どうなっているのか、ジャーナリストの藤倉善郎氏がリポートする。
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福島第一原発から20km圏内で動くものといえば、首輪をした犬たちくらいだ。車を止め、ドッグフードをやり始めると、たちまち6~7頭に囲まれてしまった。
福島県浪江駅前で、そんな犬たちを保護しに大阪から来たという動物愛護団体のメンバーに遭遇した。
「飼い主が一時帰宅して餌をやっている犬を誤って保護しないよう、衰弱している犬だけを保護しています。いま複数の団体が20km圏内に入っていて、手当たりしだいに犬を保護して名を挙げようとしている団体もある。数多く保護すれば、それを宣伝材料にして大々的に寄付金集めができますから」
近くのショッピングセンター周辺も犬や猫がうろついている。誰が置いて行ったのか、ベンチに大量の餌が袋ごと山積みだ。そこに突然、50代の男性が自転車で通りかかった。
「福島市に避難したんだけど、風邪を引いたらもう(避難所が)拒否だよ。よそに行っても、もう入れてくんねぇんだ。だから浪江に帰ってきた。こっちの方が楽だよ。食事は3日に1回。食料を長持ちさせるんだよ」
そこに今度は、迷彩服姿の女性が車で登場。川崎市の動物愛護団体のメンバーだという。
「猫ちゃんを見かけてれば教えて欲しいんですけど」
「ちょっとわがらねぇ」
「ああ、そうですか」
女性は、“猫ちゃん”の情報が得られないとわかると、あっさりと立ち去った。人間には全く興味がないようだ。
※週刊ポスト2011年4月29日号