避難指示区域となった福島第一原発20km圏内の街は今どうなっているのか、ジャーナリストの藤倉善郎氏がリポートする。
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福島第一原発の20km圏内には、少なくとも4つの動物愛護団体が入り乱れ、必死に犬や猫を救出しているが、牛・馬・豚などの家畜は放置されたままだった。
第一原発から8.4kmの地点。富岡町のコンビニ駐車場で一息ついていると、牛の遠吠えのような声が聞こえてきた。民家の窓から牛が首だけ外に出して、こちらを見つめている。近くの畑には、世話する人もなく野放しにされた牛が群れをなして草を食っていた。群れの1頭が、民家に入り込んでしまったのだろうか。
庭先の雑草を引き抜いて食べさせてやると、美味そうに平らげ、「モッ!」と叫びながら寄ってくる。しかし窓枠に足がひっかかって出られない。記者一人で部屋から出してやるのは不可能だった。
南相馬市で出会った酪農家の男性は、牛の世話のために避難先から戻ってきたという。
「ここは原発から20.2kmだから、屋内退避とか自主避難。そんな中途半端な話では、どうしていいかわからねぇんだ。避難しろというなら避難するし、牛を処分しろというなら処分する覚悟を決める。はっきりしてほしい」
いつ終わるともしれない非日常の日々。人間のみならず牛も犬も猫も、途方に暮れている。
※週刊ポスト2011年4月29日号