慰めようと思って発した言葉に、被災者の心が傷つけられることもある。
「ボランティアの人たちには感謝している。でも、“大丈夫です。絶対に明日はやってきます”“お気持ちはわかりますよ”なんて同情の目でいわれても、あんたたちにわかるわけがないとつい思ってしまう」(仙台市の避難所にいる40代女性)
気仙沼市在住の50代男性は、被災後2週間ぶりに発見された父親を弔う通夜の席で、参列者の一人にこういわれたという。
「遺体が見つかってよかったですね」
男性が“遺体だけでも見つけてあげたい”と必死に探し続けていたのは確かだ。遺体が見つかったときには、安堵も覚えたという。
「それでも、死んだのに“よかったね”なんて、人にいわれたくないんです。逆の立場だったらどんな気持ちがするか考えてみてほしい」
精神科医でたかはしメンタルクリニック(岩手県宮古市)の高橋幸成院長はこういう。
「自宅に家族、仕事も失い、自分だけが生き残ったと苦しんでいる個々の人たちはがんばろうにもがんばれない。虚しく響くだけです。“今日1日を生きましょう”、私はそう話します」
※週刊ポスト2011年4月29日号