国際情報

震災で傷ついた日本経済から富を奪っていく海外投機筋の手口

 震災により、日本経済は阿鼻叫喚の様相を呈した。だが、そうしたパニックの中で、巨額の儲けを手にした連中がいる。ゲームのように市場を翻弄して、日本の国富を奪っていく蛮行を、金融ジャーナリストの小泉潔氏が報告する。

 * * *
 為替市場にも“仕掛け”はあった。日経平均が8227円を記録した2日後の3月17日早朝。1ドル=76円25銭を記録し、これまでの最高値が更新された。この“時間帯”にミソがあった。
 
 外為ディーラーの経験を持つ三宅輝幸・和光大学名誉教授が言う。

「ニューヨーク、ニュージーランドのウェリントン、シドニー、東京と24時間為替市場は開いているが、ニューヨークが引ける日本時間の朝方5時頃は取引量が少なくなる。その時間帯を狙って投機筋が動いたのでしょう。
 
 市場には急激な円高の理由として、生保や損保が災害に際して海外資産を売って円に替える『リパトリ』(本国への資金還流/repatriation)が広がったから、という観測が一時流れましたが、それすら投機筋が市場に流した間違った言説だった可能性はある」
 
 実際、午前6時前には1ドル=79円台だった相場は、たった20分で3円以上円高に振れている。ここで狙われたのはFX(外国為替証拠金取引)に参加する多くの個人投資家だった。1995年に記録した79円75銭という最高値のラインが抵抗線となるなどの考えから、円安に戻すと見込んでドル買い・円売りポジションを持っていた個人投資家が狙い撃たれたのだ。
 
 FXは先物と同様、レバレッジを利用して少額の資金で大きな額の取引ができる。その代わり、予測と逆に為替が振れれば損失は大きく膨らみ、強制的にロスカット(損切り)されることもある。

「ここまで円高が進んだら自動的に損失を確定する」というストップロス注文も少なくない。大幅な高値更新はないと踏んだ彼らの心理を嘲笑ったのは、やはり海外の投機筋だった可能性が高い。そうして個人投資家は否応なしに損失を確定させられる状態に追い込まれた。

 旧大蔵省OBはこう語る。

「自見庄三郎金融担当相、与謝野経財相以下、緊急事態という認識が全くない。新たなルールや規制を設けることを何よりも早く考えるべきで、それをわからない大臣などいらない」

 海外投機筋は、今も虎視眈々と日本のマネーや優良企業の経営権を狙っている。円高から一転、ジワジワと進む円安も不気味だ。日本が大きく傷ついた震災の中、我が国から富を奪っていく連中に、屈してはならない。

※SAPIO2011年5月4日・11日号

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン