ベストセラー『がんばらない』の著者で、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、医療現場で、最近「男子更年期障害」の患者と遭遇する。鎌田氏が「男性更年期障害って何だ?」を解説する。
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内科外来をやっていると、男性更年期障害と思われる中年の患者さんがやってくる。ちょっとしたことにイライラして、抑うつ的になっていたり、無気力になったり、つねに疲労感を感じたり……。腰が痛いと体の不調を訴え、不眠がちの患者も多い。
うつ病の初期に似ているけれど、実は違う。内科外来では聞きづらいテーマではあるが、性欲が低下していないか、勃起障害や射精障害はないかを聞き出す必要がある。
1998年の調査によると、日本には1000万人近くの勃起障害の患者がいると推測されている。
勃起障害を起こす要因は、年齢的な要素に加え、タバコ、高血圧や糖尿病、肥満、うつ病なども勃起障害の原因となる。
こういった症状があるとき、男性ホルモンであるアンドロゲンが低下していないかを確認する。女性ホルモンが低下して、中年になって女性が更年期障害になるのと同じで、それになぞらえて、日本では男性の更年期障害と表現されてきた。
男性の更年期障害は、アンドロゲンの注射を3~4週間に1回打つことによって、症状が改善することもある。
アンドロゲンは、男らしさを作るホルモンなので、これが減ると筋肉量が落ち、骨密度も下がり、認知力の低下も起きて、アクティブだった男性がしゅんと縮こまることが多くなったりする。性機能の低下だけではなく、造血力も低下し、慢性の貧血をひき起こしたりもする。
先にあげた症状のうち、いくつかが重なっている場合、「加齢男性性腺機能低下症候群」という病気ではないかと疑う。長ったらしい、大げさな病名だけど。
これが疑われる場合には、テストステロンという精巣ホルモンの補充療法を行なってみるのも、ひとつの手だ。勃起障害に対しては、テストステロンだけで効果が上がることもあるが、多くの場合は、これにバイアグラを併用する必要があることが多い。
日本には3種類のED(勃起不全)の治療薬があり、泌尿器科で男性更年期障害及び、ED治療も行なわれている。
いずれにせよ、名前が怖そうなだけで、専門医に診断をしてもらうと、思いのほか効果がある。それまで辛く、悩んでいた症状が、あっという間に解消する場合もあるのだ。
※週刊ポスト2011年4月29日号