東日本大震災を受け、プロ野球界は開幕日問題で揺れた。そんな大騒動ののちに、プロ野球が無事開幕した。果たして球団経営、選手の意識の裏側になにがあるのか? 作家の山藤章一郎氏が報告する。
* * *
選手の意識から球団経営まで、近年、パリーグには大きな変革が起きているといわれる。スターも増えた。野球ファンも新しいうねりを肌で感じるが、現実はどうか。これまでとは異なる予兆を孕んだ今年のプロ野球を以下検証する。
現・プロ野球経営評論家、元・ロッテ、西武、ダイエーホークスの球団代表・坂井保之さんの見方。
「日本のプロ野球は巨人中心の体質のなかで、パリーグは肩身を狭くし、各球団は長いあいだ貧弱で身売りを繰りかえしてきた。だがそれは過去の話。いまや、強靱な企業集団が生き残った。各球団が掲げている理念は、利益拡大というより、フェアプレーに徹することです。フロントも選手も自信を持ち、地域をまきこみ、地域密着の成果を挙げた。
しかしプロ野球の経営条件がよくなったわけではない。たとえば普通の商店なら340日営業している。会社ならほぼ年間240日活動できます。プロ野球は年間144ゲームのうち、ホームゲームとして稼げるのは、半分の72日間しかない。一年間を72日で賄おうというのだから、利益を追求するのは土台無理な話でしょう。では、なぜ球団を所有するのか。当然利益追求が目的ではない。金銭利益ではなく、もっと大きい次元の、企業イメージの向上をはかる。そこにメリットがある。
ダイエーホークス時代、中内功オーナーとこんな会話をしました。『野球商売は金がかかりすぎる。いったいいつ儲けがでるのか』。
私は答えました。『儲けを考えるなら野球商売から手を引くべきです。パチンコ屋の方が手っ取り早い。野球は企業イメージを保つための社会事業です』。
選手の育て方、技術力アップ、地域密着、球団運営の仕方、人気の出し方。とにかく石にかじりついても、自主独立の気概でプロ野球を良くしようといま立ち向かっているのがパリーグ。それが、ファンの眼に見えてきたのです」
※週刊ポスト2011年4月29日号