2010年10~12月期には出荷台数が1億台を超え、同期間の全世界のパソコン出荷台数を上回ったスマートフォン(スマホ)。2015年には、ハードとソフトを合わせて、世界で “30兆円規模”になると予測される巨大市場だが、いちよし経済研究所企業調査部部長の張谷幸一氏によると、今後、スマホの高機能化が進むにつれ、日本メーカーの技術力が大きく脚光を浴びてくるという。張谷氏が注目するスマホ関連中小型株を紹介しよう。
* * *
スマホの高機能化に伴い、さまざまな半導体などのチップを搭載するプリント配線板の技術が注目されている。日本ではイビデン、メイコーといった企業が、世界トップクラスのシェアを握っており、いずれも、基板を薄くし、配線密度の向上を可能とする「エニーレイヤー構造」のプリント配線板を作る技術を持っている。
こうしたプリント配線板の高密度化は、高性能スマホには不可欠の技術である。高性能化により、端末の電池消費量が増えるため、電池スペースを拡張させる必要がある。その分、他のスペースを縮小させなくてはならないからだ。
省スペース化には、チップ部品のさらなる小型化も必要となる。そこで、小型化に欠かせないチップ抵抗器向けアルミナ基板で、世界シェア約6割を握っていると見られるMARUWAも注目できよう。超小型チップ向けでは唯一のサプライヤーとなっている模様で、豊富な受注残を抱えていると見られる。
高密度プリント配線板が採用されることで、必要となるめっき用薬品を製造するメーカーも要注目。メックは、パソコン向け中心に使われる高シェアの銅表面粗化剤が、スマホのエニーレイヤー基板にも採用される見通し。また、JCU(荏原ユージライト)は、今後需要が増えると想定されるビアフィリング銅めっき薬品で、世界シェアの半数程度を握っている。
その他、高密度に伴う端末内の電波干渉を防ぐ、フレキシブルプリント回路用電磁波シールドフィルムで世界シェア9割以上を占めるタツタ電線も有望だ。
こうした企業は、それぞれの事業内容に特化した中小型株であるため、大手企業と異なり、業績に対するスマホ関連の寄与度も大きい。
ここまで、電子部品というハードに関連したメーカーについて述べてきたが、コンテンツ関連企業も見逃せない。スマホ市場で、事業を世界展開できるチャンスが到来しており、ディー・エヌ・エー(DeNA)、システナといった海外展開に注力しているコンテンツ企業も大きく注目されている。
米アップル社は、毎年iPhoneの新製品を発売している。例年に倣えば、この6月頃にも『iPhone5』が発表される可能性が高い。「おサイフケータイ機能」の搭載も噂されるなど、高機能化はいちだんと進む。
日本でもスマホの普及率はまだ1割程度で、これが3割に達するまでは、株式市場の注目テーマであり続けるのは間違いないだろう。世界規模で市場が拡大し続けるスマホ関連株は、まだまだ魅力的なのである。
※マネーポスト2011年5月号