今年、全国の書店員が“いちばん売りたい本”を選ぶ『本屋大賞』大賞を受賞した作家の東川篤哉さんが、その受賞作である『謎解きはディナーのあとで』(小学館、1575円)が誕生した背景と裏話を聞かせてくれた。
「ちょうど“執事喫茶”がブームになりかけていたので、女性向けの雑誌だし、執事探偵を登場させたらウケるかなと(笑い)。執事がいるならもうひとりはお嬢様。そのふたりが事件に巻き込まれるとしたら、お嬢様は刑事という設定がいいと考えました」(東川氏、以下「」内は同)
こうして新米お嬢様刑事の麗子と執事という名コンビが誕生したわけだが、ともすれば鼻もちならないキャラになりがちなお嬢様に、どうやって親近感を持たせるかという点については頭を悩ませたという。
「たんなるお金持ちのお嬢様では読者から反感を買って嫌われてしまうかもしれないという危惧がありました。そこで、当初はさえない中年男性にするつもりだった麗子の上司の風祭警部を、やはり金持ちに設定し、麗子を上から目線で虐げるキャラに仕立て上げたんです。こうすれば、読者は麗子に共感しますよね」
現場に高級車のジャガーで駆けつけるセレブ上司・風祭という“3人目の主要キャラ”が決まると、東川さんのイメージは急速にふくらんでいった。
「裏話になるんですが、途中から風祭警部はちょっと狩野英孝さんっぽい感じになっているんですよ。4話までと5話以降を書く間に少しブランクがあったのですが、この時期、ちょうど彼がデビューしてテレビに出始めていたころで、“この人、風祭警部みたいだな”と思って(笑い)。だから、5話と6話は白いスーツ姿で登場している。それは狩野英孝さんの影響を受けていると思っていただいて結構です」
※女性セブン2011年5月5日号